


【13】初回面接のポイントB:顕在的ニーズと潜在的ニーズについて

1.顕在的ニーズと潜在的ニーズ(隠されたニーズ)
●ニーズには、顕在的ニーズと潜在的ニーズがあるといわれます。潜在的ニーズは、「隠されたニーズ」とも呼ばれ、その発見が重要であり、高い専門性が求められます。
●潜在的ニーズは更に、ニーズがあるにもかかわらず自覚されていないニーズと、ニーズは自覚されていても何らかの理由により顕在化(表出)されていないニーズに分かれると考えられています。
●また、そのニーズが顕在化(表出)されない、隠されている理由としては、以下のことなどがあるといわれます。
@利用者本人がニーズを認識できない(していない)
A家族(介護者)がニーズを認識できない(していない)
B利用者本人の抑圧
C家族(介護者)による抑圧
D社会的抑圧
E社会的孤立
F複雑で複合的な課題が重なりニーズが認識(特定)できない
2.介護支援専門員などの援助者によって隠されたニーズ
●前述のニーズが顕在化(表出)されない、隠されている理由は、一般的にいわれていることで、私は介護支援専門員などの援助者によって隠されたニーズという視点が重要だと思います。
●つまり、一般的にいわれている前述のニーズが顕在化(表出)されない、隠されている理由は、あくまでも利用者や家族(介護者)側の理由であり、介護支援専門員などの援助者は、専門性の高い知識と技術などの学習により、鋭い洞察力を養うことが重要と考えられています。
●もちろん、それらのことは専門職としては当然に理解し、実行しなければならないことですが、私は「対人援助」の最も重要な基本は「人と人の信頼関係」であると思っています。その基本の上に、前述のニーズの区別や、隠されたニーズの理由などを考えるべきだと考えています。
●特に利用者本人と家族(介護者)の関係は、何十年もの歳月で積み重ねられたもので、しかも、家族関係、家庭の事情は他者には「言いたくない」「知られたくない」という気持ちは、私たちでも同じです。
●家族関係や家庭の事情でも、「自慢」や「誇れること」ことなら良いでしょうが、援助を希望して相談をされるという状況では、相談をする側の「心の重み」と「心のハードル」は、その立場になってみなければ分からない程の気持ちだと思います。
●そのことを十分に理解し、相手の立場になって注意深く配慮することが重要です。例えば、初めての相談の電話を受けた時に、その相手がどんな気持ちで電話をしてきたかということを思いやることが必要です。「主訴は何か」「必要なサービスは何か」、あるいは「潜在的ニーズは何か」などを考えることはもちろん重要ですが、その前に、相談を受ける側の姿勢(言動)というものが、相手が最初に最も強い印象となって残るということを忘れてはならないと思います。
●居宅への訪問時においても、門、玄関の入り方、靴の脱ぎ方、相談を受ける(話しをする)時のマナー、態度も大変に重要です。そして、面接の最初は「聞くこと」(傾聴)後の「労い」です。「大変だったんでしょうね」「よくここまで頑張ってこられましたね」「普通にはできないことです」というような言葉が、利用者本人や家族(介護者)にとって、どれだけ大切な言葉かを自覚することが必要だと思います。
●つまり、利用者本人や家族(介護者)が、「この人ならば信頼できる」「この人ならば親身になって悩みを聴いてくれる」「この人ならば何とかしてくれる」などと思ってくれれば、何でも話してくれることになり、しかも利用者本人や家族(介護者)の立場になって考えながら、高い専門性の中での洞察力、判断力があれば、潜在的ニーズ(隠されたニーズ)は、自然と明らかになることが多いということです。
●相手の立場になって考えない、事務的に相談受付記録用紙へ順番に記入しているだけの面接、訪問時などのマナーの悪さなどによって、利用者本人や家族(介護者)が、「この人は信頼できない」「この人は真剣に悩みを聴いてくれない」「この人は本当に必要な助けとなるのか不安」というような気持ちになってしまえば、「必要なサービスの利用希望だけの話し」ということになります。
●介護支援専門員などの援助者自身が、潜在的ニーズ(隠されたニーズ)の理由の一つにならないように、日々、注意をしておく必要があります。専門職だからこそ、「人間が陥りやすいこと」を自覚し、それを回避することが重要だと思います。
<2003年 7月27日掲載>

