直線上に配置



【12】初回面接のポイントA(個別援助技術のさまざまな定義)について




1.「M.リッチモンド」の定義

「ケースワークの母」と呼ばれるM.リッチモンドは、著書「ソーシャルケースワークとは何か」(1922年)の中でケースワークの概念を以下のように定義しました。

「ソーシャル・ケースワークは、人々とその社会環境との間に、個々別々に、意識的にもたらされる調整を通じて、人格の発達を図る諸過程から成り立っている。」

ここでの重要なポイント、キーワードは、@個別化、A意識的調整、B人格の発達ということであり、ケースワークをその過程と定義しました。

個別化は当然のこととして、意識的な調整と、人格の発達ということに関しては、現在のケアマネジメントにおいても、十分に参考にしなければならない、基本的な視点であると思います。



2.「H.パールマン」の定義

ケースワークの分野で有名なH.パールマンは、著書「ソーシャル・ケースワーク:問題解決の過程」(1957年)の中で、個別援助技術を以下のように定義しました。

「個別援助技術は、個人が社会に機能する際に出会う問題を、より効果的に処理できるよう援助するために、ある人間関係機関によって用いられる過程である。」

また、その構成要素として以下の4つをあげています。この構成要素を「4つのP」と呼ばれます。

@来談者(Person)
A対象となる問題(Problem)
B面接が実施される場所(Place)
C援助過程(Prosess)

さらに、サービスを利用して問題解決に取り組んで行く利用者の力を表現するために「ワーカビティ」(workability)という合成語(「work」+「ability」)を作り、そのワーカビリティの3つの要素は以下のとおりで「MCOモデル」と呼ばれます。

@動機づけ(Motivation)
A能力(Capacity)
B機会(Opportunity)



3.「S.バワーズ」の定義

S.バワーズは個別援助技術を以下のように定義しました。

「個別援助技術は、利用者とその環境の全体、またはその一部との間に、よりよい適応をもたらすのに役立つような個人の内的な力及び社会資源を動員するために、人間関係についての科学的知識と対人関係における技能を活用する技術(アート)である。」

※個別援助技術は「アート」である
⇒個別援助技術には過程と方法を含むが、それ以上に「創造的なもの」があるとして「芸術」と同じ意味の「アート」とという言葉を用いました。ただし、この「アート」という言葉を用いた理論家は他にはいないようです。



4.その他の定義

個別援助技術の定義については他にも以下の色々な定義があります。

@F.ホリスの定義
AH.バートレットの定義

Bその他多くの定義



5.個別援助技術の定義と実務上の留意点

このように、個別援助技術という重要なことですが、多くの学者、学派の定義があり、時代の移り変わりによっても捉え方が変化しているようです。

なぜ、学生でもない実務者の皆様に、この個別援助技術の定義についてご紹介した理由は、初回面接(インテーク)だけでなく、利用者やご家族との対応時の、援助者の「基本的姿勢」「基本理念」等、多くの参考になるポイントがあると思ったからです。

学生時代に勉強した時には、あまりにも当然のことと思い、真剣には考えていませんでしたが、実際の現場の中で、以上の「基本」を忠実に行なうことの難しさを痛感します。

何より「初心を忘れないこと」「全ては基本に帰する」「温故知新」ということだと思います。

「分かりきっている」「当然」「当たり前」等と思うことの恐ろしさを、あえて「さまざまな定義」としてご紹介しました。

<2002年 5月20日掲載>