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【8】利用者が望む介護サービスについて




1.居宅介護支援及び給付管理業務の過程において利用者が望むもの

「ケアプラン基礎講座」や、この「ケアプラン専門講座」の中で説明した多くの事は、介護支援専門員の方々がケアプランを作成する場合の基本的に理解しなければばらないことや、重要な視点、ポイント、そして居宅介護支援及び給付管理業務等の「過程」(プロセス)等についてでした。

つまり、介護支援専門員の方々にとっての適切な介護支援業務や、適切なケアプラン、適切な介護サービス等について説明してきたわけです。

今度は、「利用者やご家族等」の方々にとっての適切なケアプランや介護サービス等について考えてみます。

先ず、居宅介護支援及び給付管理業務は以下の過程となっていますが、利用者等が望んでいる過程や、その内容とは一体何なのでしょうか。
@居宅介護支援の開始(インテーク)

A課題分析(アセスメント)

B居宅サービス計画原案作成

Cサービス担当者会議での検討とサービス担当者間の調整

D居宅サービス計画書の利用者への説明と同意

Eサービス提供票及び別表の作成と交付

Fサービスの継続的な把握(モニタリング)と評価

G給付管理票及び介護給付費請求書の作成と提出

上記の介護支援業務等の過程の中で、多くの利用者が望んでいること(過程)は、きっと、@居宅介護支援の開始(インテーク)、D居宅サービス計画書の利用者への説明と同意なのではないでしょうか。

先ず、@居宅介護支援の開始(インテーク)については、「自分の希望どおりの介護サービスを利用したい」という気持ちや、今の困っている状況を「何とかしてくれる相談窓口」ということ、そして「相談すること自体」(悩みを聞いてもらいたい等)も大きな目的としてあると思います。


次に、D居宅サービス計画書の利用者への説明と同意については、「何曜日」の「何時から何時まで」、「どこの」、「誰が」、「何をしてくれる」のか。そして、「お金はいくら払えば良いのか」ということ等を知りたいのではないでしょうか。

つまり、その2点以外の過程は、介護支援専門員として適切な介護サービスを提供するためには「重要なこと」であることは当然ですが、利用者等にとっては「望んでいる」ものではないということを前提に考えるべきだと思います。

言い方をかえれば、利用者等にとっては、それらの過程自体を知らない方々が多く、仮に知っていたとしても、結局は、具体的な内容が分かる「契約書」や「説明明細書」としてのケアプランと、実際の介護サービスを利用すること自体を望んでいると考えられます。



2.利用者やご家族等が望まれるものとは何か

それでは、上記の過程ではなく、利用者やご家族等が望まれているもの、望まれていることとは何でしょうか。

それは、実際の介護サービスを以下のポイント、あるいはキーワードとして利用することだと思います。
@うまい:良いもの(介護サービス)を親しみやすく頼れる専門家に!

Aはやい:欲しい時にすぐに簡単に!

Bやすい:同様なものなら安価なものを!

さらに付け加えて言えば、「欲しいものを、欲しい時に、欲しいだけ(どれだけでも)、安く」利用したいということが、介護サービスに限らず、一般的な人間の心理ではないでしょうか。

その時に、注意しなければならないことがあります。それは、利用者等が望んでいる「もの」とは、例えば訪問介護や通所介護等の「介護サービス」(種類)ではないということです。

介護サービスの種類というのは「制度上」の区別であって、利用者等にとっては、その区別は利用の条件や「メニュー」(ケアのセットやパッケージ)にしか過ぎないということです。

つまり、利用者等が望んでいるのは、例えば「自宅で料理を作ってもらいたい」ということで、それを介護保険上では「訪問介護」の「家事援助」となるということです。

別な視点で考えるとすれば、次に説明する利用者等の「クレーム」の内容を考えれば、逆の発想として「利用者の望んでいるもの」が理解できるのではないでしょうか。

つまり、「望んでいるもの」と、実際に提供された(利用した)サービスの違いで、納得がいかない場合に「クレーム」になって表現されることを考えれば、利用者等の望んでいるものが自ずと分かると思います。



3.利用者等のクレームの例

以下に利用者等のクレームの例をあげてみます。

実際の現場では、様々なクレームや要望等が聞かれると思います。

その場合に、「クレーム」(苦情)を、「不平・不満」や「文句」等として捉えるのではなく、利用者からの貴重なご意見、つまり「利用者が何を望んでいるのか、望んでいないのか」を抽象的でなく具体的に「教えていただける」「大切な宝物」だと考えることは絶対に必要です。

このクレーム(苦情)対応の方法や仕組みづくり等については、モニタリングや評価にも関連しており、とても大事なことなので、あらためて、この専門講座で詳しく説明する予定です。

(1)費用について
@費用が高い

A他より高い

B費用の体系が納得(理解)できない


(2)日時や頻度について
@自分の都合に日程が合わない

A融通がきかない

B土日や祝日の利用ができない

C早朝や深夜の利用ができない

Dもっと回数を増(減)やしてもらいたい

Eもっと時間を増(減)やしてもらいたい

F送迎(車に乗っている)時間が長い


(3)計画について
@何をしてくれるのか(計画)が分からない

Aしてもらいたいことと違う

Bアフターケアーが悪い

C余計なことはしてもらいたくない


(4)制度や仕組みについて
@利用ができないことに納得できない

A調査が面倒くさい

Bプライバシーのことはあまり話したくない

C手続きが面倒くさい

D緊急に対応してくれない

E申し込みから提供までの期間が長い


(5)人や対応について
@担当者の対応が悪い

A親切に話してくれない、冷たい、事務的

B言葉づかいが悪い

C態度が悪い

D知識が無い、技術が無い

E有資格者が少ない

F男性は嫌だ、女性は嫌だ

G若い人は嫌だ、年配は嫌だ

H利用者に嫌な人がいる

I連絡がとれていない

J人によって対応・やり方が違う


(6)場所や地区について
@家から遠い、近い

A交通の便が悪い

B周りに何もない

C場所的に騒がしい


(7)建物や設備について
@古い、汚い

A不潔、衛生管理が悪い

B使いにくい

C暑い、寒い

D暗い

E利用できる設備が少ない


(8)食事等について
@食事が美味しくない

A食事が足りない


(9)効果や達成感について
@効果がない

A何のために利用するのか分からない


(10)医療面について
@診察・治療・検査ができない

Aリハビリテーションができない

<2001年12月 7日掲載>